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函館YWCA会館の歴史 〜登録文化財としての価値

みどりまち通り「文化村」と函館YWCA

20 世紀初頭の函館。郊外へと宅地化が進められるなか、豪商三代目・渡辺熊四郎が開発・分譲したのが、函館市松陰町みどりまち通りの「文化村」と称される一帯です。1 区画 300 坪で前庭・裏庭を設け、屋根は緑色、洋風応接間を作るなどの条件をつけて街並みを整えました。

函館YWCAは日本YWCAの働きかけにより、1949 年(昭和 24 年)、遺愛学院の協力のもと発足しました。

その翌年1950年(昭和 25 年)に、 1926 年(大正 15 年)に専用住宅として建てられたとされる現在の建物を入手し、活動の拠点としました。

当時の面影を唯一残す、YWCA会館の特徴と魅力

建物は、木造一部二階建て、鋼板葺で非対称な外観を持ち、ハーフティンバーの装飾のある緑色の切妻屋根と、淡ピンク色に塗られた下見張りの外壁が織り成す外観は、緑町通を通る人々の目をはっと引くと同時に、やすらぎを与えています。函館に多く見られる洋風建築の側面と、昭和前期の質の高い郊外住宅の趣を示しています。

前に大きく迫り出したポーチの屋根は、装飾少なめの荘重なドリス式の角柱で支え、唐破風(からはふ)を洋風にアレンジしています。ゆるい照り起こりの曲線を見せ、両開きのドアを擁する正面玄関や、台形状のアルコーブ(開口部)に沿ったソファ等が残る応接間も、原形は当時のまま残されています。

函館YWCA会館は、「函館の建物探訪」「函館市史」「地域史研究はこだて」といった函館の歴史を刻む編纂物の数々にも写真入りで紹介されています。1981 年(昭和 56 年)には、「函館の歴史風土を守る会」によるコンクーの「名建築番付」に入り、翌年に「歴風保存文化賞」を受賞。

国指定の「登録有形文化財」に認定 市内では18番目

2016年11月、文化庁により「登録有形文化財」に認定されました。 五島軒本店旧館、函館中華会館、高龍寺などと並び、函館市内では、18番目として国指定の登録有形文化財となりました。

なお、登録有形文化財としての登録には建設後50年が経過し、①国土の歴史的景観に寄与している、②造形の規範となっている、③再現することが容易でないことが基準とされています。

多世代への学びの場や平和・人権・環境活動の拠点として、函館YWCAは約70年の長きにわたり、この歴史ある会館を使用してきました。

「地域により開かれた場に」 次世代につなぐ会館活用

社会貢献の場としての会館の価値を再認識し、2017年からはより一層の会館活用を検討する「会館みらいプロジェクト」が発足。会員を中心にしたプロジェクトメンバーの働きかけとYWCAに気持ちを寄せてくださる皆さまに支えられ、2019年に大規模改修が行われました。

この改修では、約900万円にも及ぶ現金の寄付、建材や家具などの現物寄付、市内の廃校からの不要になった備品の譲渡、壁塗りやタイル張りを行うDIYサポーターの協力など、函館市・道南地区はもとより日本各地から多大な協力・お気持ちをいただきました。この場をお借りし、改めて心より感謝申し上げます。

人口減少が進み、人との関係が分断されつつある昨今の日本において、函館YWCA会館が、「文化村」の特徴を残して現存する希少な建物として、また、志ある方々の活動の拠点として、さらには、地域に開かれエンパワーを感じる場所としていけるよう、会館の利活用により一層尽力してまいります。